様々な物理量を表す国際的な基準としてSI(国際単位系)が挙げられますが、その中で「物質量」を表す基本単位が「モル(mol)」です。
高校で化学を習った方ならご存じと思いますが、このモル(mol)って結局何なの?とよくわからなかった方もいらっしゃるんじゃないでしょうか?
今回はモルの概念と換算するとどうなるのか、主だった物質名の例を使って解説してみたいと思います。
目次
物質量の単位「モル(mol)」とは
モル(mol)はSI基本単位の1つで、「物質量」を表す単位です。物質量って何なの!?と科学が苦手な方なら混乱したと思いますが、端的に言うと「ある物質が決まった質量だけある場合に、その中に含まれる原子や分子などの数」です。
モル(mol)の定義
SIでは以下のように堅苦しく定義されています。
①0.012kg(= 12g)の炭素12の中に存在する原子の数と等しい数の要素粒子を含む系の物質量
②モルを用いる時、要素粒子が指定されなければならないが、それは、原子、分子、イオン、電子、その他の粒子またはこの種の粒子の特定の集合体であってよい
モル(mol)が表す数
上の定義を読んで意味が分かる方には何もお伝えすることはありませんが、もう少しかみ砕いてモルが何を表すかご説明しますと、1molとは以下のことを指します。
1mol:含まれる要素粒子の数が6.02×1023個
この6.02×1023という数を「アボガドロ定数」と呼びます。
先ほどご紹介した定義で考えると、質量数12の炭素(12C)が12gある時の炭素原子の数が6.02×1023個ですよ、ということを示しているのです。
他の例で水(H2O)を考えると、水の質量数は18となりますので、1molの水には質量数と同じ質量=18gの水分子が存在しており、その数は6.02×1023個です。2molであれば36gで分子数は12.04×1023個となります。
モル(mol)の単位換算方法
mol⇔mmol
現在、モルを日常生活で使うことはほぼありません。一般人がかろうじて触れるとしたら健康診断の結果に表示されている、血液の生化学検査項目で見かける[mmol]という単位くらいでしょう。
mmolというのは「ミリモル」と読み、1molの1/1000であることを示す単位です。モルという単位の前にミリという接頭辞が付いた単位ですね。
式で表すと以下のようになります。
1mmol = (1 / 1000)mol もしくは
1mol = 1000mmol
mol/L⇔g/mL
mol/Lをモル濃度と呼びますが、単位体積(容積)当たりの質量に変換する際は、モルの意味を再度思い出してみましょう。
水(H2O)1molの質量は、原子量と同じく18gとなります。つまり、物質量molと質量の間には以下の関係が成り立っています。
物質量[mol] = 質量[g] / 原子量[g/mol]
モル濃度は単位体積(容積)あたりのモル数(分子の数)ですから、g/mLへの換算は以下の式で行うことができます。
モル濃度[mol/L] = (質量[g] / 原子量) / L = (1 / 1000) × (質量[g] / 原子量) / mL
※1L = 1000mLより
このように、単位同士の換算(変換)は1つ1つの単位だけを取り出して考えるとわかり易いです。
mol/L⇔mEq/L
mEqは「ミリ当量(とうりょう)」と呼ばれ、「ミリ(m: 1/1000の意) + 当量(Eq)」という電解質の量を表す組合せ単位です。医療業界で慣用的に使われてきたものですが、SI単位ではないので、業界外では通じません。
ここで、Eqは1Eq = 1mol / イオン価数(=原子価)と定義されているため、1mEqは以下の式で表されます。
1mEq = 1mmol / イオン価数(=原子価)
イオン価数は原子によって異なり、例えば水素イオン(H+)は1価の陽イオンですのでイオン価数は1、酸化物イオン(O2-)は2価の陰イオンですのでイオン価数は2となります。
医療業界でよく使われるのはナトリウムイオン(Na+)やカリウムイオン(K+)、カルシウムイオン(Ca2+)などが挙げられますが、仮にナトリウムで考えると、1mEq = 1mmol / 1 = 1mmol つまり 1Eq = 1molとなります。
よってモル濃度[mol/L]とミリ当量[mEq/L]の換算式は以下の通りです。
1mol/L = 1000mEq/L × イオン価数 = 1Eq/L × イオン価数
また、1mmol/L = 1mEq/L × イオン価数 = (1 / 1000) × 1Eq/L × イオン価数