レントゲンの被曝量は何シーベルト?単位変換・換算方法や定義も!

放射線に関わる単位の中で、被曝による人体への影響度合いを表しているのが「シーベルト(Sv)」です。

シーベルト以外、例えばベクレル(Bq)やグレイ(Gy)といった単位は放射線量や吸収線量といった物理量を表しますが、それが直接どの程度人間に影響があるかは直接わかり難い単位です。

今回は「シーベルト」の定義から他の単位との変換(換算)方法、更にはレントゲンなどの医療行為で受ける被爆量がどの程度なのかを紹介します。

放射線の単位シーベルトとは

冒頭で書いた通り、シーベルトは人体が放射線を受けた(被爆した)時にその影響度合いを表す「線量当量」の単位です。ベクレル(Bq)やグレイ(Gy)と同じく、固有の名前を持つSI組立単位の1つです。

線量当量には、人体のある組織が放射線を被曝した時の影響を測る「等価線量」と、人体への影響を全身で合計した「実効線量」があります。

単位記号

[Sv]※放射線防護の研究をしていたスウェーデンの物理学者「ロルフ・マキシミリアン・シーベルト」の名前からとったもの

 

シーベルトの定義

シーベルトは、日本では次のように定義されています。

グレイで表した吸収線量の値に、経済産業省令で定める係数を乗じた値が1である線量当量

具体的には、グレイで表した吸収線量(J/kg)の値に、状況によって変わる「修正係数」をかけたものがシーベルトです。定義式は以下の通りです。

1 [Sv] = 1 [Gy] × 修正係数W = 1 [J/kg] × 修正係数W

グレイについてはこちらの記事で詳しく解説しています↓↓↓
放射線治療やレントゲンで見るグレイとはどんな単位?シーベルトとの換算も!
放射線治療やレントゲンで見るグレイとはどんな単位?シーベルトとの換算も!

修正係数は個別の単位を持たない無次元量なので、シーベルトはグレイと同じく[J/kg]で換算されます。

また、この修正係数Wは等価線量を求める時と実効線量を求める時とで異なります。

 

SI基本単位での表し方

シーベルトはグレイと同じく、単位質量あたりの吸収エネルギー量[J/kg]を表します。グレイの解説記事でも書きましたが、これをSI基本単位だけで表すと次のようになります。

1 Gy = 1 J/kg = 1 (N・m) / kg = 1 (m・kg・s-2・m) / kg

よって、分母と分子でkgを約分すると、

1 Gy = 1 m2/s2

ジュール(J)の詳細については、こちらの記事をご参照ください↓↓↓
運動・熱・回転などエネルギーの単位換算表!eVやJ、Wを簡単に変換!
運動・熱・回転などエネルギーの単位換算表!eVやJ、Wを簡単に変換!

他の放射線関連単位との換算方法

シーベルトとグレイの換算

先に述べた通り、シーベルトはグレイの値に修正係数をかけたものですので、シーベルト→グレイに換算するには、逆にシーベルトを修正係数で割れば良いことになります。

式で表すと次の通りです。

グレイ[Gy] = シーベルト[Sv] / 修正係数W

 

修正係数の値

等価線量を求める際は「放射線加重係数」が、実効線量を求める際は「組織加重係数」が、それぞれ修正係数になります。

放射線加重係数

放射線加重係数は放射線の種類によって、以下のように定義されています。

  • エックス(X)線、ガンマ(ɤ)線、ベータ(β)線:1
  • 陽子線:5
  • アルファ(α)線:20
  • 中性子線:5~20(エネルギーによる)

組織加重係数

組織加重係数は、放射線を当てる体組織によって以下のように異なります。

  • 骨髄(赤色)、結腸、肺、胃、乳房:0.12
  • 生殖腺:0.08
  • 膀胱、食道、肝臓、甲状腺:0.04
  • 骨表面、脳、唾液腺、皮膚
  • 残りの組織の合計:0.12

参考:環境省「放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料(平成29年度版)第2章 放射線による被ばく 2.3 放射線の単位

 

シーベルトとベクレルの換算

シーベルトは人体への放射線の影響を表す単位、ベクレルは放射能そのものを表す単位で、扱う物理量が異なるため、直接シーベルトとベクレルを換算できる一般式は存在しません

例えるなら、長さを表す単位「メートル(m)」と重さを表す単位「グラム(g)」を換算したいと言っているようなものですね。

ある特定条件下で換算できる式も存在していますが、それはまた別に解説したいと思います。

レントゲンなど身の回りのシーベルト値

元々私たちは、ただ日常生活を送っているだけでも、日々自然放射線によって被曝しており、その当量線量は年間平均2.4mSv(ミリシーベルト)です。

この他、胸のX線(レントゲン)撮影など身近で被曝する機会における当量線量を表にまとめてみました。

身のまわりの当量線量
生活行動など 当量線量[mSv/h]
X線(レントゲン)撮影
※1回分
0.05~4
東京-ニューヨーク間
航空飛行旅行(往復)
0.19
一般公衆の線量限度
※年間
1.0
自然放射線の量
※年間
2.4
CTスキャン
※1回分
7~20
人間の被爆の許容量 50
全身被爆 100
全身被爆
白血球の一時的減少
500
全身被爆、嘔吐、全身倦怠
リンパ球著しく減少
1000
全身被爆 死亡(5%) 3000
全身被爆 死亡 7000
注意
上表の中で「年間」や「1回分」と記載のないものに関しては、1時間あたりの線量[mSv/h]になります。

この表を見ると、X線やCTといった検査類で被曝する量がいかに小さいか理解できると思います。

まとめ

シーベルト:人体が放射線を受けた(被爆した)時にその影響度合いを表す「線量当量」の単位。ベクレル(Bq)やグレイ(Gy)と同じく、固有の名前を持つSI組立単位の1つ。単位記号は[Sv]。

定義:グレイで表した吸収線量の値に、経済産業省令で定める係数を乗じた値が1である線量当量。

具体的には、グレイで表した吸収線量(J/kg)の値に、状況によって変わる「修正係数」をかけたもの。

1 [Sv] = 1 [Gy] × 修正係数W = 1 [J/kg] × 修正係数W

修正係数:等価線量を計算する場合は「放射線加重係数」、実効線量を計算する場合は「組織加重係数」がそれぞれ修正係数となり、放射線の種類や被曝する部位によって値が異なる。