pH(ペーハー)の正式名称や意味とは?定義式や温度との関係も!

小学生の時に誰でも覚えがあるであろう「リトマス試験紙」による酸性・アルカリ性の実験。紙が赤くなれば酸性、青くなればアルカリ性と教わり、身近な様々な液体に浸してみた方も多いでしょう。

この酸性・アルカリ性の度合いを示すのが「pH(ペーハー)」と呼ばれる濃度の単位です。

今回はpHの正式な名称(読み方)や意味、更には温度との関係について解説します。

pHとは

pHは「水素イオン濃度指数」を示す単位で、「ピーエッチ(ピーエイチ)」と読みます。ペーハーという読み方はドイツ語読みで、私たち一般庶民にはこちらの方がなじみがありますが、正式に認められた読み方ではありません。

単位記号

[pH]※potential of hydrogenの頭文字を取ったもの。水素の元素記号を表すことから、Hのみ大文字となる

注意
pHは単位記号ではありますが、メートル(m)やグラム(g)といった他の多くの単位とは異なり、例えばpHが3.0の溶液を3.0 pHというように表記することはなく、pH3.0と表記します。

唯一3.0 pHと書くのは、水素イオンの濃度差を表すときだけです。

 

pHの意味・定義

単位の名称「水素イオン濃度指数」から想像できる通り、pHはある溶液中にどの位水素イオン(H+)が存在しているかを数値で表すことで、酸性・アルカリ性の度合いを示す単位です。

水素イオンが多い = 酸性度が高いことを意味しています。

またpHは7付近を中性、7より小さいと酸性、7より大きいとアルカリ性と溶液を分類することができます。

具体的な定義式については次項でご紹介します。

pHの定義式

pHの概念を提唱したのは、デンマークの生化学者セーレン・セーレンセンで、現在は「水素イオンの活量の逆数の常用対数」というのが正しい定義となっています。

ただし、様々な溶液のpHを測る時や計算する時はこの定義に則ると不便があるため、通常は「水素イオンのモル濃度を[mol/L]で割った値の逆数の常用対数」という昔の定義を使うことが多いです。

注意
上記の定義は大気圧における薄い水溶液であることが前提となっていますので、前提に当てはまらない場合は、正式に活量を求める必要があります

これら2つの定義式を次にご紹介します。

水素イオンの活量から求める場合

pHの本来の定義「水素イオンの活量の逆数の常用対数」に基づく定義式は以下の通りです。

pH = – log10 aH+

 

水素イオンのモル濃度から求める場合

通常使われる「水素イオンのモル濃度を[mol/L]で割った値の逆数の常用対数」を定義した式が下式となります。

{\displaystyle \mathrm {{pH}=-\log _{10}{\frac {[{H^{+}}]}{mol~L^{-1}}}} }

pHと温度の関係

pHの値は温度や気圧によって変化します

例えば1気圧の純水の場合、温度が0℃のときの純水では pH = 7.47、10℃のとき7.27、20℃のとき7.08、30℃のとき6.92、60℃のとき6.51となります(参考:Wikipedia「水素イオン指数」)。

これは温度が高いほど水の自己解離が進むためで、60℃の純水に含まれる水素イオンの数は、0℃の純水に含まれる数のおよそ10倍となります。

しかし、熱いお湯を飲んで「あれ、少し酸っぱいかな?」と感じることは無いですよね。

確かに温度によってpHは変わりますが、同時に中性のpHも変化します。つまり、常温では中性の目安となるpHは7ですが、温度が上がれば7よりも小さく、逆に温度が下がれば7よりも大きくなるわけです。

従って、相対的な酸性・アルカリ性の度合いは温度によって変化しないのです。

実際、市場で売られているpHを測定する機器(pHメーター)には、大抵温度補償機能が備わっており、何℃の溶液を測定しても、常に常温(25℃付近)におけるpH相当の値を表示してくれるようになっています。

ただし温度1℃の変化でどの程度pHが変化するかは、その溶液によって異なるため、絶対的な定義がある訳ではなく、多くは評価から得られた実験値に基づいています。

身近な溶液のpH

私たちが生活する上でよく見る・聞く溶液のpHをご紹介します。本記事では、前項までにご紹介してきたpHの測定で定義された溶液の他、独自の基準がある温泉のpH基準もご紹介します。

身のまわりのpH

酸性のものは酸っぱく感じられ、アルカリ性のものはヌルヌルとヌメりが感じられます。

ちなみに強いアルカリ性によって感じられるヌメリは、肌が溶けていることが原因なので注意しましょう(塩素系の漂白剤を触った時など)。

引用:東京水道局「トピック第5回 pH(ピーエッチ)とは?」より

 

温泉(鉱泉)のpH基準

温泉(鉱泉)のpHは、湧き出た所で測定したpHによって以下の通り厳格に定められています。

  • 酸性:pH 3 未満
  • 弱酸性:pH 3 以上 6 未満
  • 中性:pH 6 以上 7.5 未満
  • 弱アルカリ性:pH 7.5 以上 8.5 未満
  • アルカリ性:pH 8.5 以上

引用:環境省「鉱泉分析法指針」より

まとめ

pHは水素イオン濃度指数を表す単位記号で、「ピーエッチ(ピーエイチ)」と読むのが正式な読み方。「ペーハー」はドイツ語読みだが現在は正式には認められていない。

pHは溶液中の水素イオンの濃度を元にした酸性・アルカリ性の度合いを表す単位であり、7付近を中性としてそれより小さい値を酸性、大きい値をアルカリ性として定義している。

定義式は水素イオンの活性量から算出するものとモル濃度から算出するものがあるが、通常はモル濃度から算出する下式が使われることが多い。

{\displaystyle \mathrm {{pH}=-\log _{10}{\frac {[{H^{+}}]}{mol~L^{-1}}}} }

また、pHには温度依存性があり、純水では温度が高いほどpHが下がる。ただしこれは中性の判断基準となるpHも変化することを表しており、その溶液の酸性・アルカリ性の度合いが変化することを意味する訳ではない。