湿り空気線図とは?見方・使い方から結露量の計算方法など解説!

湿度について学ぶ人が必ず目にするであろう「湿り空気線図」。

一見複雑な線図ですが、この見方をきちんと知っておくと、湿度についてぐっと理解が深まりますよ。

今回は単位そのものについての記事ではありませんが、湿り空気線図の見方・使い方について解説します。

湿り空気線図とは

湿り空気線図はその名の通り、空気の湿り状態がわかる線図(グラフ)です。

引用:空気線図計算シート

一般的には上図のように-10℃ ~ 50℃の範囲の湿度について把握できるNC図が有名ですが、専門書の中には-40℃ ~ 0℃の低温領域の湿り空気線図(LC図)や、40℃~120℃の高温領域の湿り空気線図(HC図)が紹介されているものもあります。

空気中に含まれる水分量は温度による変化が大きいので、1つの線図で幅広い温度範囲を網羅することができないんですね。

なお、湿り空気線図は以下の6つの構成要素から成り立っています。

  1. 乾球温度:グラフの横軸(垂直に伸びた直線)。一般的な温度計の温度
  2. 湿球温度:斜め(右下がり)に伸びた直線
  3. 相対湿度:放射状(右上がり)に伸びた曲線。一般的な湿度計の湿度
  4. 絶対湿度:グラフの縦軸(水平に伸びた直線)。乾き空気(DA: Dry Air)1kgに占める水分量(kg)を表した重量絶対湿度
  5. 比エンタルピー:斜めに伸びた直線。単位は[kJ/kg(DA)]
  6. 比容積:斜めに伸びた直線。乾き空気1kgあたりの体積(m³)を表す。単位は[m3/kg(DA)]

これだけの情報を1つの線図に織り込んでいるのでパッと見複雑で、どう見たらよいか戸惑う方も多いでしょう。

もちろん用途にはよるのですが、初見の方が使い方を把握したいのであれば、まずは次の3つの見方から覚えましょう。

  • 乾球温度:グラフの横軸(垂直に伸びた直線)。一般的な温度計の温度
  • 相対湿度:放射状(右上がり)に伸びた曲線。一般的な湿度計の湿度
  • 絶対湿度:グラフの縦軸(水平に伸びた直線)。乾き空気(DA: Dry Air)1kgに占める水分量(kg)を表した重量絶対湿度

参考記事:相対湿度と絶対湿度の単位換算方法!飽和水蒸気量など計算式も紹介!
相対湿度と絶対湿度の単位換算方法!飽和水蒸気量など計算式も紹介!

具体的な見方については次項で解説します。

湿り空気線図の見方

相対湿度

最も基本的な空気線図の使い方です。まずは相対湿度の見方を覚えましょう。

  1. まずその空気の温度(乾球温度)をグラフの横軸から探す
  2. その温度の線(垂直線)と相対湿度の曲線との交点を見る

たとえば25℃50%RHという空気の状態を知りたければ、下図赤点を見れば良いということになります。

 

相対湿度と絶対湿度の換算

相対湿度の見方を知ったら、次に絶対湿度との換算方法を覚えてしましましょう。

こちらの記事でも計算式を挙げて紹介しましたが、湿度に関する計算式は厳密な定義があまりなく、近似式が使われことが多いです。

その点湿り空気線図を使うと、相対湿度と絶対湿度の換算が視覚的にすぐ行えるので便利ですよ。

  1. 知りたい空気の相対湿度の点を打つ
  2. そのまま横軸に水平に、グラフ右側へ向かって線を引く
  3. 縦軸との交点の数値を読む

湿り空気線図では縦軸が絶対湿度(重量絶対湿度)なので、右端に書かれた数値を読めばよいことになりますね。

先と同じ25℃50%RHの空気を例にすると、下図の青点が絶対湿度になります。

逆に、もし絶対湿度から相対湿度を知りたい場合は、重量絶対湿度と温度がわかればOKです。

重量絶対湿度の値から水平に線を引き、温度(乾球温度)の垂直線との交点を求めれば、それが相対湿度の値ということになります。

 

露点温度

露点温度とは結露し始める温度、つまり湿度100%RHとなる空気温度のことです。湿球温度=乾球温度となる点とも言えますね。湿り空気線図においては、最も左側に描かれた曲線が湿度100%RHの線を表します。

  1. 知りたい空気の相対湿度の点を打つ
  2. そのまま横軸に水平に、グラフ左側へ向かって線を引く
  3. 最も左側に描かれた曲線との交点の数値を読む

たとえば25℃50%RHの空気の露点温度を求めたいというような場合は、下図緑点が露点温度になります。

湿り空気線図から結露量を計算する方法

露点がわかれば、結露量(水の質量)を求めることも難しくはありません。

ここでは例として、25℃50%RHの空気を10℃まで冷やした時の結露量を求めてみます。大まかな流れは以下の通りです。

  1. 求めたい空気の相対湿度の点を打つ(a)
  2. (a)点から横軸に水平に、全曲線にまたがるように線を引く。グラフ右端の縦軸との交点を求める(b)
  3. 冷やした後の空気温度の露点に点を打つ(c)
  4. (c)点から横軸に水平に、グラフ右側に向かって線を引き、グラフ右端の縦軸との交点を求める(d)
  5. (b)点と(d)点の差分が結露量

例に従って求めてみましょう。まず、25℃50%RHの空気の露点温度は、下図(a)点、すなわち13.8℃になります。この時の絶対湿度(b)は9.8 g/kg(DA)です。

次に10℃まで冷やした場合の露点は当然ながら(c)点の10℃です。そしてその時の絶対湿度(d)は7.7 g/kg(DA)となります。

よって両者の差分が、空気中に存在できない水分、即ち結露量ですから、その質量は下式で求められます。

9.8 - 7.7 = 2.1 [g/kg(DA)]

つまり、1㎏の乾燥空気中2.1gの水分が結露するということですね。

まとめ

今回は単位そのものについての解説とは異なりますが、湿り空気線図の見方について解説しました。

湿り空気線図の構成要素:

  1. 乾球温度:グラフの横軸(垂直に伸びた直線)。一般的な温度計の温度
  2. 湿球温度:斜め(右下がり)に伸びた直線
  3. 相対湿度:放射状(右上がり)に伸びた曲線。一般的な湿度計の湿度
  4. 絶対湿度:グラフの縦軸(水平に伸びた直線)。乾き空気(DA: Dry Air)1kgに占める水分量(kg)を表した重量絶対湿度
  5. 比エンタルピー:斜めに伸びた直線。単位は[kJ/kg(DA)]
  6. 比容積:斜めに伸びた直線。乾き空気1kgあたりの体積(m³)を表す。単位は[m3/kg(DA)]

これらの中でまずは1,3,4の見方を覚えるのがおすすめ。

相対湿度の見方:

  1. まずその空気の温度(乾球温度)をグラフの横軸から探す
  2. その温度の線(垂直線)と相対湿度の曲線との交点を見る

絶対湿度の見方:

  1. 知りたい空気の相対湿度の点を打つ
  2. そのまま横軸に水平に、グラフ右側へ向かって線を引く
  3. 縦軸との交点の数値を読む

露点温度の見方:

  1. 知りたい空気の相対湿度の点を打つ
  2. そのまま横軸に水平に、グラフ左側へ向かって線を引く
  3. 最も左側に描かれた曲線との交点の数値を読む