地震に関する単位と言えば「震度」や「マグニチュード(M)」をよく聞くと思いますが、最近の研究では、地震の際に建物に与える被害の大きさと地震動の最大速度に関係が深いことがわかってきているそうです。
この地震動の最大速度を表す際使われる単位が「カイン(kine)」です。また、地震動に関しては加速度を表す単位「ガル(Gal)」も従来からよく使われて来ました。
今回はこのカインやガルについて、具体的に何の単位なのか、地震の大きさとどう関係あるのか解説します。
目次
カイン(kine)という単位とは
カインという単位を聞いたことがないという方も多いと思いますが、実は「速度」の単位の1つです。ただし非SI単位のため、通常あまり使われません。
主に使われているのは「地震動」の速度を表す時です。
単位記号
[kine]※「運動」を表すkinematicの頭4文字を取ったものと言われる
定義・意味
1 kine = 1 cm/s = 0.01 m/s
1秒間に1 cm進む速度を表します。1 m/sの1/100の速さであり、非常にゆっくりとした速度を定義しています。
ガル(Gal)という単位とは
ガルは「加速度」の単位の1つです。カイン同様、非常にゆっくりした加速度を表します。
こちらもSIでは認められておらず、地震学以外の分野で使われることはほとんどありません。
単位記号
[Gal]※イタリアの物理学者ガリレオ・ガリレイ(Galileo Galilei)の頭文字より
定義・意味
1 Gal = 1 cm/s2 = 0.01 m/s2
1秒につき1 cm/s (1 kine)の加速度を意味しています。
なお地球上における標準重力加速度は9.80665 m/s² ですから、ガルで表すと下式となります。
9.80665 m/s2 = 980.665 Gal
SI接頭辞による分量単位
ガル(Gal)は非SI単位なのですが、日本の計量法では、地震に関する加速度の計量に限って、GalとmGal(ミリガル)の使用が認められています。
ミリ(m) = 1/1000 (10-3)という意味ですので、ミリガル(mGal)は以下の意味を持ちます。
1 mGal = 1/1000 Gal
カインやガルと地震の大きさの関係
カインやガルは速度や加速度の単位ですが、地震の大きさとどう関係してくるのでしょうか?
私達が最もよく知る「震度」という単位(実際は階級を表しているだけであり単位ではないのですが)は、地震の大きさを大まかに示しているにすぎません。
カイン(kine)やガル(Gal)も観測地点での地震動の大きさを表しますが、震度よりも揺れ方を正確に(科学的に)表しているのです。特に建物の被害状況を示すのに使われます。
たとえば、建物は地震によって東西南北上下と立体的に3方向に揺られますので、それぞれの方向に「最大〇Gal(または〇kine)の地震動が働いた」と言うように表します。これにより、建物が地震に対して安全かどうかを検討することができるようになります。
なお、過去に起きた地震記録の中でよく使われる記録例は以下の通りです。
記録名(年) | 最大加速度(Gal) | 最大速度(kine) |
エルセントロNS(1940) | 341.7 | 34.07 |
タフトEW(1952) | 175.9 | 17.81 |
東京101NS(1956) | 73.7 | 7.90 |
八戸NS(1968) | 225.0 | 34.08 |
引用:日本建築構造技術者協会ホームページ「『地震-3』-地震の大きさ」
特に東京101は小さい地震の記録ですが、東京の地盤の性質をよく現しているという理由で、7.9 kineを25 kineや50 kineなど大きい地震に換算して使われるそうです。
まとめ
カイン:1秒間に1cm進む速度を表す単位。単位記号は[kine]。
1 kine = 1 cm/s = 0.01 m/s
ガル:1秒につき1cm/sの加速度を表す単位。単位記号は[Gal]。日本では特別に地震分野においてミリガル[mGal]の使用も認められている。
1 Gal = 1 cm/s2 = 0.01 m/s2
1 mGal = 1/1000 Gal
※または 1 Gal = 1000 mGal