インダクタンスの単位や求め方の公式は?インピーダンスの計算方法についても!

インダクタンスは「誘導係数、誘導子」とも呼ばれる、コイルの性質です。電子回路を学ぶ人なら、らせん状の回路記号でおなじみですよね。

このインダクタンスの単位は「ヘンリー(H)」というSI組立単位ですが、その定義や求め方など改めてご存知でしょうか?

今回はインダクタンスの単位ヘンリーについて紹介し、記事後半ではインダクタのインピーダンス計算方法についても解説したいと思います。

インダクタンスとは

インダクタンス(誘導係数)とは、インダクタ(インダクション・コイルの意味。単にコイルの事だと思って良いです)が蓄えられる磁気エネルギーの量を表したものです。

インダクタンスの定義

回路に電流が流れると、その周囲に磁場が形成されます。あるコイルを考える際、コイルの巻線に流れる電流をI、巻線を貫く磁束をΦとすると、ΦはインダクタンスLを使って下式で表されます。

Φ = LI

このように、Lは電流と磁束の比例係数として定義されているため、誘導係数という呼ばれ方をすることもあります。

 

インダクタンスの記号表記

インダクタを英語で表記するとinductorですが、数式や回路図ではなぜか大文字のエル(L)が使われています。

アイ(I)は電流で使われるのと、インダクタンスに大きく関係するレンツの法則を見出した物理学者ハインリヒ・レンツ(Heinrich Friedrich Emil Lenz)の名前に由来しているとされています。

インダクタンスの単位ヘンリーとは

インダクタンスの単位には「ヘンリー」という特別の名称を持つSI組立単位が使われています。

ヘンリーの単位記号

[H]※アメリカの物理学者ジョセフ・ヘンリーの名前の頭文字を取ったもの

 

ヘンリーの定義

1ヘンリーは次のように定義されています。

1秒間(s)に1アンペア(A)の割合で変化する直流の電流が流れるときに1ボルト(V)の起電力を生ずる閉回路のインダクタンス

これを式で表すと以下のようになります。なおΩは抵抗の単位「オーム」、Wbは磁束の単位「ウェーバ」を意味します。

1 H = 1 (V・s)/A = 1 Ω・s = Wb/A

 

SI基本単位での表し方

ヘンリーはSI組立単位ですから、当然ながらSI基本単位の組み合わせだけで表現することができます。

上の定義式をSI基本単位にバラしてみると次のようになります。

ヘンリー[H] = (V・s)/A = {(W/A)・s}/A = J/A2 = (N・m)/A2 = (m2・kg・s-2)/A2 = (m2・kg)/(s2・A2)

ここまで分解すると、もはや何の量を表しているのかよく分からなくなりそうですが、電気に関する単位はこの他にも色々あり(テスラやクーロン、ファラドなど)、もちろんそれぞれと換算することも可能です。

よく使われる倍量・分量単位

実際に我々が設計する回路においては、1ヘンリー(H)のコイルというのは巨大な上、巻線数が多過ぎて電気抵抗が大きくなってしまうため、実用的ではありません。

実用上はヘンリーの前にSI接頭辞であるミリやマイクロをつけた「ミリヘンリー(mH)」、「マイクロヘンリー(μH)」が使われることが一般的ですので、これらの記述を覚えておくと良いでしょう。

SI接頭辞について詳しく知りたい方はこちらをご参照ください↓↓↓
SI接頭辞(SI接頭語)とは?一覧まとめと変換方法、覚え方を紹介!
SI接頭辞(SI接頭語)とは?一覧まとめと変換方法、覚え方を紹介!

 

インダクタのインピーダンス計算方法

電気回路の交流回路を学ぶ上ではインピーダンスの概念が外せませんが、インダクタのインピーダンスXLは下式で表されます。

XL = jωL

※j:虚数単位、ω = 2πf:交流の角周波数

MEMO
インダクタによるインピーダンスXLのことを誘導リアクタンスと呼びます。

なお、多くの回路素子ではそのインピーダンスがRLC回路で表されますが、特にRLC直列回路において、その合成インピーダンスZは下式で表されます。

Z = R + jωL - j(1/ωC)

まとめ

インダクタンス:誘導子、誘導係数ともいう。コイル(インダクタ)が蓄えられる磁気エネルギーの量を表す。

ヘンリー:インダクタンスの物理量を表す単位。特別の名称を持つSI組立単位の1つ。単位記号は[H]。

定義:1秒間(s)に1アンペア(A)の割合で変化する直流の電流が流れるときに1ボルト(V)の起電力を生ずる閉回路のインダクタンス

1 H = 1 (V・s)/A = 1 Ω・s = Wb/A

インダクタのインピーダンス計算方法:XL = jωL

※j:虚数単位、ω = 2πf:交流の角周波数