湿度には%表示の相対湿度と絶対湿度の2種類があります。
相対湿度は空気中に存在できる水分量の内何%の水分があるのかを表すもの、絶対湿度は水分量の絶対値を表すもので、当然ながらそれぞれ単位も異なります。
同じ「湿度」を表すものでありながら、実は相対湿度と絶対湿度の換算はちょっと複雑なプロセスが必要なんですよね。
今回は相対湿度と絶対湿度の単位換算方法について解説します。
目次
相対湿度とは
相対湿度は、ある空気に含まれる水蒸気量とそのときの気温における飽和水蒸気量との比を百分率で表したものです。
一般的に「湿度」と言われたら、こちらの相対湿度を意味します。
単位記号
[%RH] または [%]割合の単位「パーセント(%)」に、Relative Humidityの頭文字を取ったRHをつけたもの。単純に%のみで表すこともある
意味・定義
空気中にどれだけの水分(水蒸気)が存在できるかは、空気の温度(気温)によって予め決まっており、その気温における水蒸気量の限界値を飽和水蒸気量と言います。
相対湿度は、この飽和水蒸気量を100%としたときに、湿度を求めたい空気が含む水蒸気量の割合を意味しており、式で表すと下式となります。
相対湿度[%RH] = (求めたい空気に含まれる水蒸気量) / (その空気温度における飽和水蒸気量) × 100
ただ、実際には水蒸気の量というよりは水蒸気の圧力、即ち水蒸気圧を用いて次のように求めます。
相対湿度[%RH] = (求めたい空気の水蒸気分圧) / (その空気温度における飽和水蒸気圧) × 100
相対湿度と結露
相対湿度は100%RHが限界で、それ以上の数値となることはありません。では100%RHを超える水分が存在するとどうなるのでしょうか?
答えは「結露する」です。
水蒸気は水が気体となった状態を指しますが、湿度が100%RH以上になると気体として存在できない、つまり液体(=水滴)となってしまうのです。
絶対湿度とは
絶対湿度は、乾燥空気中に含まれる具体的な水分量を表したものです。容積絶対湿度と重量絶対湿度という2つの考え方があります。
単位記号
容積絶対湿度:[g/m3]
重量絶対湿度:[kg/kg(DA)]※DAは乾燥空気(Dry Air)の頭文字を取ったもの
意味・定義
容積絶対湿度と重量絶対湿度では、それぞれ考え方が少し異なりますので、それぞれ簡単に説明します。
容積絶対湿度
容積絶対湿度(Volumetric Humidity: VH)は、言い換えると大気中に含まれる水蒸気の密度です。ですから単位記号も密度と同じく[g/m3]なのです。
これを式でそのまま表すと下式となります。
VH = (求めたい空気中に含まれる水蒸気の質量) / (空気の容積)
実際の大気で計算する時は水蒸気を理想気体とみなして、以下の近似式を使用します。
容積絶対湿度VH = (求めたい空気の水蒸気分圧) / (気温 + 273.15) × 216.7 [g/m3]
重量絶対湿度
重量絶対湿度は混合比(Humidity Ratio: HR)とも呼ばれ、乾燥空気の質量に対する水蒸気質量の比を表します。単位記号の分母と分子が同じkgなのは、この定義からです。
式で表すと下式となります。
HR = (求めたい空気中に含まれる水蒸気量) / (乾燥空気の密度)
容積絶対湿度と同じく水蒸気と乾燥空気を理想気体とみなすと、以下の近似式が成り立ちます。
重量絶対湿度HR = (0.622 × 求めたい空気の水蒸気分圧) / (空気圧 - 水蒸気分圧) [kg/kg(DA)]
空調関係に携わっている方なら馴染み深い「湿り空気線図」には、こちらの重量絶対湿度が記載されています。
相対湿度と絶対湿度の単位換算方法
冒頭で書いた通り、相対湿度と絶対湿度の単位を換算するのはやや複雑なプロセスが必要です。
まずは簡単にわかり易い相対湿度→絶対湿度の換算について紹介しましょう。
相対湿度から絶対湿度への換算
相対湿度から絶対湿度を求める時は、以下の関係を覚えておくと良いです。
絶対湿度(VH) = 飽和水蒸気量 × 相対湿度[%RH]
ここで飽和水蒸気量は温度によって異なりますが、水蒸気を理想気体とみなすと下式で表すことができます。
飽和水蒸気量[g] = (217 × 飽和水蒸気圧) / (気温 + 273.15) …(1)
ここで、飽和水蒸気圧を全ての温度において精度良く近似する方法がなかなか難しいのですが、よく使われるのがTetensの方式で、下式となります。
飽和水蒸気圧 [hPa] = 6.1078 × 107.5T/(T+237.3) …(2)
※T: 気温[℃]
(1),(2)式を使えば、相対湿度から絶対湿度を求めることができます。
絶対湿度から相対湿度への換算
絶対湿度から相対湿度への変換は割と簡単に行うことができます。
相対湿度[%RH] = 絶対湿度 / 飽和水蒸気量 × 100
または次の式と言い換えることもできます。
(求めたい空気の水蒸気分圧) / (飽和水蒸気圧) × 100
飽和水蒸気量の近似式は、相対湿度→絶対湿度の変換で説明した(1),(2)式ですから、どういう換算を行うにしても、まずはある気温における飽和水蒸気圧を求める必要がある、と言うことは覚えておきましょう。
まとめ
湿度には相対湿度と絶対湿度という2つの考え方があり、通常「湿度」と言ったら相対湿度を示す。
相対湿度(Relative Humiditiy):ある温度の空気の飽和水蒸気量を100とした時に、求めたい空気が含む水蒸気量をパーセントで表したもの。単位記号は[%RH]または[%]。
絶対湿度(Abrolute Humidity):乾燥空気中に含まれる水蒸気の質量そのもの。更に容積絶対湿度と重量絶対湿度という2つの表し方がある。単位記号は、容積絶対湿度は[g/m3]、重量絶対湿度は[kg/kg(DA)]。
両湿度を換算したい場合は下式を参考に、気温から飽和水蒸気圧を、絶対湿度または相対湿度から水蒸気分圧を求めればよい。
相対湿度[%RH] = 水蒸気分圧 / 飽和水蒸気圧 × 100