放射線治療やレントゲンで見るグレイとはどんな単位?シーベルトとの換算も!

放射線に関する3つの単位「ベクレル(Bq)」、「グレイ(Gy)」、「シーベルト(Sv)」。

これらの内、純粋に放射性物質からどの程度の放射線が出ているのか(放射能)について表す単位がベクレルでした。

ベクレルについて詳しくはこちらの記事をご参照ください↓↓↓
放射線の単位ベクレルとは?計算式や換算方法、人体への影響度合いも!
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今回は人体側を基準として、人体が被曝した線量の目安として活用されている単位「グレイ(Gy)」について解説します。類似の単位「シーベルト(Sv)」との換算方法についてもご紹介しますので、参考にしてみて下さい。

放射線の単位グレイとは

グレイは、放射線を受ける(被曝する)物体が放射線から吸収したエネルギーの量を表す「吸収線量」の単位で、ベクレルと同じく、固有の名称を持つSI組立単位の1つとされています。

医療現場では、放射線治療を受ける被治療者の被曝線量を表す「臓器吸収線量」の単位としても使われています。

単位記号

[Gy]
※イギリスの放射線物理学者「ルイス・ハロルド・グレイ」の名前からとったもの

 

グレイの定義

今日では下記のように定義されています。被ばく量の基準となっているのは質量であり、体積(容積)ではないんですね。

放射線によって1 kgの物質に1 Jのエネルギーが吸収された時の吸収線量

上記の定義を式で表すと以下の通りです。

1 Gy = 1 J/kg

 

SI基本単位での表し方

SI組立単位であるグレイを基本単位の組み合わせで表現すると、ジュールを変換して以下のようになります。

1 Gy = 1 J/kg = 1 (N・m) / kg = 1 (m・kg・s-2・m) / kg

よって、分母と分子でkgを約分すると、

1 Gy = 1 m2/s2

ジュール(J)の詳細については、こちらの記事をご参照ください↓↓↓
運動・熱・回転などエネルギーの単位換算表!eVやJ、Wを簡単に変換!
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グレイとシーベルトの換算方法

グレイ(Gy)とシーベルト(Sv)はどちらも放射線を被曝した側を基準とした単位ですが、吸収した線量そのものを定量的に表したものがグレイ、被ばく線量から人体への影響度合いを表したものがシーベルトです。

グレイとシーベルトの換算式

両者の換算式自体は単純なもので、以下となります。

シーベルト[Sv] = グレイ[Gy] ×修正係数W

この修正係数というのは状況によって変わるものですが、無次元の量(単位を持たない)なので、シーベルトの単位もグレイと同じく[J/kg]であらわすことができます。

 

修正係数の例

放射線荷重係数

等価線量の算出時には放射線荷重係数が修正係数となります。放射線の種類によって以下のように定義されています。

  • エックス(X)線、ガンマ(ɤ)線、ベータ(β)線:1
  • 陽子線:5
  • アルファ(α)線:20
  • 中性子線:5~20(エネルギーによる)

組織加重係数

実効線量の算出時には組織加重係数が修正係数となります。放射線を当てる体組織によって以下のように異なります。

  • 骨髄(赤色)、結腸、肺、胃、乳房:0.12
  • 生殖腺:0.08
  • 膀胱、食道、肝臓、甲状腺:0.04
  • 骨表面、脳、唾液腺、皮膚
  • 残りの組織の合計:0.12

参考:環境省「放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料(平成29年度版)第2章 放射線による被ばく 2.3 放射線の単位

放射線治療やレントゲンを受けるときの吸収線量

私たちが今日において被曝をするとしたら、主に次のパターンでしょう。

  • がん罹患時の放射線治療
  • レントゲン撮影
  • CT等の検査受診

当然ながら放射線治療時がもっとも被爆量としては大きく、レントゲンなどの検査ではごく微量の被曝量ですが、具体的にどの程度の吸収線量となるのか、一通りご紹介します。

放射線治療

放射線治療:2 ~ 3 Gy

がんの種類ごとの線量の目安については、日本放射線腫瘍学会(JASTRO)がまとめている「放射線治療計画ガイドライン」に詳しく掲載されています。

2020年4月現在における最新版は2016年版のようですので、気になる方はJASTROのサイトを確認してみて下さい。(原本はかなりの大ボリュームなので、読むときはちょっと気合が必要です)。

 

レントゲン撮影

 

 

まとめ

グレイ:放射線を受ける(被曝する)物体が放射線から吸収したエネルギーの量を表す「吸収線量」の単位で、ベクレルと同じく固有の名称を持つSI組立単位の1つ。単位記号は[Gy]。

単位の定義:1 Gy = 1 J/kg

また、J = N・m = (m・kg・s-2)より、SI基本単位のみで表すと、1 Gy = 1 m2/s2となる。

放射線の人体への影響度合いを直接測る単位「シーベルト」との換算式は以下の通り。

シーベルト[Sv] = グレイ[Gy] ×修正係数W

修正係数は状況などに応じて使われる値が異なる。