電気電子回路を学ぶ際の重要な回路部品の1つが、内部に電荷を蓄えられる部品コンデンサです。
さらにコンデンサの容量を「静電容量(キャパシタンス)」と言い、その単位が本記事で解説する「ファラド(ファラッド)」です。
ファラドが具体的に何を意味するのか、他の単位との変換(換算)方法は、そしてよく似た「ファラデー」と呼ばれる単位とどう異なるのかなど、解説します。
目次
キャパシタンスとは
キャパシタンス(capacitance)は、冒頭でも書いた通り静電容量の別名です。電気容量と訳されることもあり、コンデンサなどが蓄えられる電荷の量を表しています。
なお、コンデンサのように電荷を蓄えたり放出したりする性質を持つ部品のことをキャパシタと言います。
広義では電池(バッテリー)もキャパシタということになりますが、電子回路の世界で使われるようなコンデンサは、ごく微量の電荷しか蓄えることができません。その代わりに瞬時に電荷を蓄えたり放出したりできるので、この性質を使って回路の安全性を保ったりするのにも使われます。
本記事でも、基本的にはキャパシタ=コンデンサとして扱います。
静電容量の単位ファラドとは
静電容量の物理量を表す単位が「ファラド(ファラッドとも言います)」です。ファラドは特別の名称を持つ組立単位の1つで、後述する「ファラデー」とは異なりますので注意しましょう。
単位記号
[F]※イギリスの化学物理学者「マイケル・ファラデー」の名前の頭文字を取ったもの
ファラドの定義
計量単位令によれば、ファラド(F)は以下のように定義されています。
1ファラド(F) = 1クーロン(C)の電気量を充電したときに1ボルト(V)の直流の電圧を生ずる2導体間の静電容量
これは言い換えれば、電位差あたりで蓄えられる電荷量を指しています。また、式で表すと下式となります。
1 F = 1 C/V
SI基本単位での表し方
SI組立単位であるファラド(F)を基本単位だけで表すと次のようになります。
ファラド[F] = C/V = (s・A)/(W/A) = (s・A2)/(J/s) = (s2・A2)/(N・m) = (s4・A2)/(m2・kg)
※s:秒、A:アンペア、m:メートル、kg:キログラム
電気関係の単位ですからアンペアが入るのはわかりますが、時間の4乗に比例するとか、いまいちピンとこない単位になりますね。
よく使われる倍量単位、分量単位
電子回路でよく用いられる電解コンデンサやセラミックコンデンサなどからすると、1Fという数値は大きすぎる値です。1Fのコンデンサを探したら、結構えげつない大きさになってしまいますよね。
電子回路の世界でよく使われるのは、ファラド(F)の前にSI接頭辞をつけた「マイクロファラド(μF)」や「ナノファラド(nF)」、「ピコファラド(pF)」あたりです。
各単位とその大きさは次の通りです。
- 1 μF = 10-6 F
- 1 nF = 10-9 F
- 1 pF = 10-12 F
参考記事:SI接頭辞について詳しく知りたい方はこちらもどうぞ↓↓↓
SI接頭辞(SI接頭語)とは?一覧まとめと変換方法、覚え方を紹介!
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電荷の単位ファラデーとは
ファラデー(Fd)という単位は、クーロン(C)以前に使われていた電荷の単位で、現在では使われていません。
単位の由来はもちろん、ファラドと同じくマイケル・ファラデーの名前から来ています。こちらで先に単位名に「ファラデー」を使ってしまったので、後出の「ファラド」は名前を少し変形させた名称になったのでしょう。
単位記号
[Fd]
ファラデーの定義
単位ファラデーは、1 molの電子が持つ電荷の量と定義されています。これはつまりアボガドロ数個分の電子の電荷量を意味しており、式で表すと下式となります。
1 Fd = NA × e
※NA:アボガドロ数、e:電子素量
上の定義を見ると、電荷の総量は単位量あたりの量×物質量(mol)と考えれば良いので、現在のクーロンよりも素人的にイメージがわきやすい気がします。
他の単位でもちょくちょく思うんですが、昔の単位の方がよりシンプルに定義されているものが多いんですよね。文系脳にはそちらの方がありがたかったり。。。
ファラデーとクーロンの変換方法
ファラデーを現在の電荷の単位「クーロン(C)」を変換する場合は、ファラデーの定義をそのまま展開していけばよいことになります。
1ファラデー[Fd] = NA × e
ここで、アボガドロ定数NA = 6.02214076 × 1023 mol-1、電子素量e = 1.602176634 × 10-19 Cですから、ファラデーとクーロンの関係は以下となります。
参考記事:物質量モル(mol)の定義などについてはこちら↓↓↓
物質量(mol)の単位を変換・換算すると?酢酸や尿素など実例で解説!
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1 Fd = NA × e × mol = 96485.33212 C
式に勝手にmolがかけられてる!と思うかもしれませんが、現在のSIにおいてはNAはmol-1という次元を持つ定数なので、昔の定義(無次元だった)との整合を取る必要があるんですね。
なお、この96485.33212という数字は、高校化学で習った方もいるであろうファラデー定数Fと同じ値です。
ファラデー定数Fの次元はというと、[C/mol]でしたね。つまり、F = 1 Fd/molという関係になります。
まとめ
キャパシタンス:コンデンサなどが蓄えられる電荷の量を表すもの。静電容量の別名。
キャパシタンスの単位:ファラド(ファラッド)。単位記号は[F]。
定義:1ファラド(F) = 1クーロン(C)の電気量を充電したときに1ボルト(V)の直流の電圧を生ずる2導体間の静電容量
式で表すと、1 F = 1 C/V
名称が似ている単位に、電荷の単位「ファラデー」があるが、現在は使われていない。
ファラデーの定義:1 molの電子が持つ電荷の量