産業界において環境・省エネを意識する上で重要な考え方の1つが「エネルギー消費原単位(エネルギー原単位とも)」です。
いつも本ブログで紹介している、SI単位や尺貫法、ヤード・ポンド法といった単位系が表す物理量とは違いますが、これもまたいわゆる「単位」であるということで、解説してみたいと思います。
今回はエネルギー原単位とは何か?その計算方法や分母として何を使えば良いのかなどご紹介します。
エネルギー原単位とは
エネルギー原単位は正確には「エネルギー消費原単位」の事を指します。
省エネルギー対策における重要な考え方で、エネルギーの使用の合理化等に関する法律「省エネ法」で定められています。
その意味は、独立行政法人中小企業基し盤整備機構が以下のようにがわかりやすく解説してくれています。
エネルギー消費原単位とは、 単位量の製品や額を生産するのに必要な電力・熱(燃料)などエネルギー消費量の総量のことです。省エネ法では「エネルギー消費原単位を年平均1%以上改善」することを求めています。
引用:独立行政法人中小企業基盤整備機構 J-Net21「エネルギー消費原単位と省エネの関係は?」より
例えば自動車なら、1台のクルマを作るために消費したエネルギーの合計量、ということですね。今や製造業だけでなくあらゆる産業において、このエネルギー原単位をいかに改善するかが、今後の環境経営にとって重要なポイントとなってくる訳です。
エネルギー原単位の計算方法
省エネ法によると、エネルギー(消費)原単位の計算式は以下の通りです。
エネルギー消費原単位 = (A-B-B’) / C
A: エネルギー使用量(燃料の使用量、他人から供給された熱の使用量、他人から供給された電気の使用量)
B: 外販したエネルギー量 B’: 購入した未利用熱量
C: エネルギーの使用量と密接な関係を持つ値
なおA、B、B’は原油換算値kℓ(キロリットル)として計算します。
またCの「エネルギーの使用量と密接な関係を持つ値」はあいまいな表現ですが、その企業によって設定の仕方が変わって来る値で、「原単位分母」と呼ばれています。
参考:経済産業省「省エネ法の概要」
エネルギー原単位分母の考え方
原単位分母の具体例
原単位分母は、先に紹介したエネルギー原単位の計算式における分母に当たるのでその名が付けらえていますが、現状では事業者が任意に設定することができます。
原単位分母としてよく使われる項目を以下にまとめました。
製造部門の場合 | 非製造部門(業務部門)の場合 |
・生産数量 ・生産台数 ・稼働時間 ・生産金額 ・生産量×稼働時間 |
・延床面積 |
原単位分母の現状
上記で紹介した具体例の内、現時点で一般的にどんな数値が原単位分母としてよく使われているのでしょうか?
これについては、製造現場(工場)とその他の事業場とで、それぞれ経済産業省が平成30年(2018年)に調査結果をまとめています。
製造部門(工場)
経産省の現状調査結果をまとめたグラフが以下になります。
単純に生産量を原単位分母としている工場が半分以上となっているようですね。また生産量に重み付けを加えている所も1割程度ありました。
以降、「(売上)金額」、「原料・中間製品量」、「床面積」、「稼働時間」などが続いていました。
非製造部門(事業場)
工場以外の事業場の調査結果は以下の通りです。
非製造部門では床面積を採用しているケースが3/4程でほとんどでした。それ以外ですと「利用人数」、「(売上)金額」、「床面積×稼働時間」が挙げられていますね。
参考:経済産業省「エネルギー消費原単位(エネルギーの使用量と密接な関係を持つ値)の考え方について」
まとめ
エネルギー原単位=エネルギー消費原単位の事を指す。省エネ法で定められた、 単位量の製品や額を生産するのに必要な電力・熱(燃料)などエネルギー消費量の総量のこと。
エネルギー原単位の計算式:(A-B-B’) / C
A: エネルギー使用量(燃料の使用量、他人から供給された熱の使用量、他人から供給された電気の使用量)
B: 外販したエネルギー量 B’: 購入した未利用熱量
C: エネルギーの使用量と密接な関係を持つ値
これらの内、Cは原単位分母と呼ばれ、事業者が任意に設定できる。工場では主に生産量の単純合計、それ以外の事業場では床面積を採用するしているケースが非常に多い。