粘度の単位としてよく使われる「センチポアズ(cP)」。力や速度といった単位とはまた違い、日常生活で目にすることはほとんどない単位ですので、どういう意味を持つのか、物質によって具体的にどのくらいの数値となるのかなど、疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。
今回はそんな「センチポアズ(cP)」のベースとなっている「ポアズ(P)」という単位の成り立ちについて解説するとともに、ポアズとセンチポアズの関係や、物質ごとの粘度一覧表もご紹介します。
粘度の単位ポアズとは
ポアズはSI単位系の前に使われていたCGS単位系※の粘度の単位です。現在使われているSI単位系における粘度の単位は「パスカル秒(Pa・s)」ですが、今でも世界的に幅広く使われており、粘度といえば「ポアズ」というイメージを持つ方も多いようです。
※CGS単位系:センチメートル(cm)、グラム(g)、秒(s)を基準とする単位系。なお、現在のSIではMKS(メートル、キログラム、秒)単位系が用いられている。
単位記号
[P]※流体力学で有名なフランスの物理学者「ジャン・ポアズイユ」の名前の頭文字を取ったもの
ポアズの定義
粘度というのは気体や液体が「流体」として流れる際、その流れやすさであるとイメージすると分かりやすいと思います。ネバネバ・ドロドロした液体は流れにくいでしょうし、逆にサラサラした液体は細い管でも簡単に流れるでしょう。
その流れやすさを具体的に力学的に説明すると、ある速度で流れる流体があった時、それに抵抗するような方向に働く応力であるということになります。
抵抗力が大きければ当然、流体は流れにくくなりますよね。
よって、ポアズは以下のように定義されています。
1 ポアズ[P] = 流体内に1 cmにつき1 cm/sの速度勾配があるとき、その速度勾配の方向に垂直な面において、速度の方向に1 cm2につき1 dyn※の大きさの応力が生ずる粘度
※dyn:力の単位「ダイン」の単位記号。ニュートン(N)以前に使われていた力の単位です。ダインについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご参照ください↓↓↓
また、ポアズの定義を式で表すと下式となります。
1 P = 1 (dyn/cm2) / {(cm/s)/cm} = 1 (dyn·s)/cm2となる。
ポアズとセンチポアズの関係
本記事のタイトル「センチポアズ(cP)」と「ポアズ(P)」の関係は、センチメートル(cm)とメートル(m)の関係に等しいです。
つまり、「ポアズ(P)」という単位の前にSI接頭辞の1つである「センチ(c)」をつけただけなので、下式が成り立ちます。
- 1 P = 100 cP
- 1 cP = 1/100 P = 10-2 P
※参考記事:SI接頭辞について詳しく知りたい方はこちらの記事をご参照ください↓↓↓
SI接頭辞(SI接頭語)とは?一覧まとめと変換方法、覚え方を紹介!
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ポアズという単位は実用上ではかなり値が大きいので、流体力学の計算においては、1/100の大きさであるセンチポアズがよく使われているんですね。
同様の理由で、「ミリポアズ(mP)」もよく使われます。これまた「ミリ(m)」+「ポアズ(P)」ですから、以下の式が成り立ちます。
- 1 P = 1000 mP
- 1 mP = 1/1000 P = 10-3 P
その他
主な物質の粘度一覧表
まとめ
ポアズ:SI以前のCGS単位系における粘度の単位。単位記号は[P]。
定義:1 ポアズ[P] = 流体内に1 cmにつき1 cm/sの速度勾配があるとき、その速度勾配の方向に垂直な面において、速度の方向に1 cm2につき1 dyn※の大きさの応力が生ずる粘度
定義式:1 P = 1 (dyn/cm2) / {(cm/s)/cm} = 1 (dyn·s)/cm2
センチポアズとの関係:センチポアズ(cP) = センチ(c) + ポアズ(P)。センチは10-2を示すSI接頭辞なので、以下の関係となる。
- 1 P = 100 cP
- 1 cP = 1/100 P = 10-2 P
実用上はセンチポアズ(cP)やミリポアズ(mP)がよく使われる。