私たちが目にする放射線・放射能に関する単位には「ベクレル(Bq)」、「グレイ(Gy)」、「シーベルト(Sv)」の3つがありますが、特にベクレルとシーベルトは、東日本大震災当時などニュースで耳にされた方も多いでしょう。
今回は放射能に関する単位「ベクレル(Bq)」について、その定義や他の単位との換算方法などご紹介します。
それぞれの単位が何を意味するのかを知っておくと、具体的にどの程度の数値で人体に影響があるのか、食品で安全なのはどの程度までなのかなど、健康に関する非常に重要な情報を読み解くことができるようになりますので、是非覚えておきましょう。
目次
放射能の単位ベクレルとは
ベクレル(Bq)は壊変率という、放射能の量を表す単位です。れっきとしたSI単位で、固有の名称を持つSI組立単位の1つとされています。
単位記号
[Bq]※フランスの物理学者アンリ・ベクレルの名前から
ベクレルの定義
ベクレルが表す「壊変率」とは、読んで字のごとく放射性同位体(いわゆる放射性物質)が単位時間あたりに「壊れて変わってしまう」数のことで、半減期の計算とも大きく関係する概念ですん。
壊変率が高い=ベクレルの数値が高いほど、放射能(放たれる放射線の数)は強くなることを意味します。
このベクレルの定義を改まって表すと、以下の通りです。
1 Bq = 放射線核種(放射性同位体)の壊変数が1秒間に1である時の放射能または壊変率
SI基本単位での表現方法
ベクレル(Bq)はSI組立単位と説明しましたが、それ即ちSI基本単位の組み合わせで成り立つ単位ということを表します。
先の定義から端的に言うと、ベクレルは「単位時間あたりの数」を表す単位ですから、SI基本単位での表現は[s-1]となります。
おなじく[s-1]で表される単位には周波数を表す「ヘルツ(Hz)」がありますが、ベクレルは放射能に関する個別の単位ですので、両者は直接イコールになるわけではありません。
周波数についてはこちらの記事を参考にしてください↓↓↓
周波数とは?ヘルツ(Hz)の求め方から単位換算まで計算方法解説!
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ベクレルの計算式
ベクレル(Bq)で表される放射能は、次の計算式で計算することができます。
壊変率[Bq] = 崩壊定数λ × 放射性同位体数N
崩壊定数λとは、放射性同位体の1個の原子核が単位時間に崩壊する確率を意味しています。これは物質により異なる数値ですが、その物質の半減期から求めることができます。
放射性同位体の数Nは時間によって減少していくのですが、その時間変化は時間t=0時の放射性同位体数をN0とすると、下式で表すことができます。
N(t) = N0e-λt
半減期というのはN0が半分の数になる時間ですから、半減期のNは N = N0/2 です。これを上式にあてはめ、tについて方程式を解くと、半減期までの時間T1/2は下式で表されます。
T1/2 = log2 / λ ≒ 0.693 / λ
よって、崩壊定数λが次のように求められます。
崩壊定数λ = 0.693 / 半減期T1/2
なお参考までに、放射性同位体の寿命Tは T = 1/λ となります。
ベクレルと人体への影響度合いの関係
まず注意したいのが、ベクレルはあくまで放射性物質からどの程度の放射線が出ているかという物理量を表しているだけで、ベクレルの値が直接人体への影響度と関係するわけではないという点です。
例えば同じ100 Bqという測定値があっても、何の物質から放射されているのか、線源の形状はどうか、間に遮蔽物があるか、はたまた吸収しやすさはどうかなどによって、人体に影響があるかどうかは全く異なるのです。
人体への影響度合いを表すための単位には「グレイ(Gy)」や「シーベルト(Sv)」がありますので、もしベクレルの値だけで人体への危険度を語っているサイトや商品などがありましたら、まず信用しない方がいいです。
ベクレルとグレイやシーベルトとの換算方法
ベクレルは放射能そのもの、グレイやシーベルトは人体への吸収線量を表す単位ですので、前項で述べた通り、簡単に1つの式で換算するということはできません。
内部被爆の算定など、ある特定の条件下では換算できるようになっていることもありますが、一般的な換算式はないということを覚えておきましょう。
まとめ
ベクレル:放射性同位体(いわゆる放射性物質)が単位時間あたりに「壊れて変わってしまう」数を表す「壊変率」を表す単位。固有の名称を持つSI組立単位の1つ。
単位記号:[Bq]※SI基本単位で表すと[s-1]
計算式:壊変率[Bq] = 崩壊定数λ × 放射性同位体数N
なお、崩壊定数λ = 0.693 / 半減期T1/2 から算出することができる。
ベクレルは放射能の強さを表すが、これだけでは人体への影響度合いを測ることができない。人体への影響を表す単位にはグレイやシーベルトがあるが、これらと直接換算できる一般式は存在しない。